目前に死が迫れば、透析覚悟で造影剤を使わざるをえない

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内臓トレーニング協会に下記のような質問が寄せられました。

Aさん(男性・70歳)は、数年前に腎臓病と診断されて、現在のクレアチニンの数値が1.65だそうです。

この度、胸部に動脈瘤が見つかり透析の話が出てきました。
Crが1.65と低いのに、手術をすると透析になってしまうというのです。

その原因が造影剤にあるというのです。
腎臓病と造影剤の関係について述べてみましょう。

 

なぜ透析をしなければならないのですか?

Aさんの質問の要旨は、

「クレアチニンが1.65なのに、なぜ透析をしなければならないのですか?」

というものでした。
以下が Aさんからの手紙の要旨です。

『私は、長年糖尿病を患ってきました。

今年の8月に市の定期健康診断で、クレアチニンの数値が1.65でeGFRが32.5という数値が出ました。
医師からは、新たに腎臓病も併発しているとのことでした。
しばらくして、狭心症の発作が起こったことにより、胸部に動脈瘤があることもわかりました。

その際、主治医から

「念のために映像を撮りたいので、透析を覚悟してください」

といわれました。

「え、透析?クレアチニンはまだ1.65なのに・・・」。

この数値でなぜ透析になるのかご教示ください』

 

動脈瘤の治療は難しい

動脈瘤治療に当たっては、発症原因が、瘤が動脈硬化によるものか、血管壁の炎症によるものか、その形や大きさ、更に破裂する危険度など、こぶの状況を詳しく調べる必要があります。
しかも、動脈瘤の破裂が死に直結しているため、全ての治療に検査を優先的に行わなければなりません。

そのとき使用する薬品が造影剤です。

 

造影剤とは

造影剤とは、体内の様子を映像にとり、視覚的に検査したり診断したりするための薬剤です。
撮影する対象や、体内に注入する手段別に様々な種類があります。
一般的な造影剤としては、レントゲン撮影のときに飲む硫酸バリウムが有名です。
その他、CTで使うヨード造影剤や、MRIではガドリニウム製剤などがあります。

MRIのように多機能な検査機器では、撮影する対象毎に造影剤を使い分けているのが普通です。
バリウムは口から直接飲み込みますが、CTやMRIの場合は静脈に注射します。副作用はほとんどありませんが、アレルギー体質の人は蕁麻疹、頭痛、悪心などを感じる人もいます。

冒頭に質問してきたAさんの場合は、太ももや腕の静脈に針を刺し、そこからカテーテルで造影剤を注入し、血管の形状や血流状態をチェックしたものと思われます。

 

造影剤と腎臓病の関係

血管の姿を撮影する血管造影検査法では、よくヨード造影剤が使われます。

血管に注入された造影剤は一般的に24時間かけて腎臓でろ過され、尿として体外に排出されます。このため、腎臓の血管に薬が充満して血流が滞ってしまい、腎臓のろ過機能がうまく働きません
その上、腎臓は造影剤も排出なければならないので、過重な負担がかかってしまいます。

このため、「腎臓障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012」では、eGFRの数値が45以下、クレアチニン値に換算すると60歳の男子なら1.30以上の数値の人にはヨード造影剤の使用を控えるよう指導がなされています。

もし、この数値より悪化した人に造影剤を使用する場合は、腎臓の急激な悪化を覚悟するよう患者さんに伝えるよう指導しています。

Aさんは70歳でCrが1.65ですとeGFRは34前後度考えられるので、医師から透析の話が出たのではないでしょうか。

 

透析覚悟で造影剤を使わざるをえないまとめ

Aさんのように、腎臓病患者の多くは腎臓病ばかりでなく、多くの病気を併発しています。
しかも、腎臓病患者の場合、併発する病気は循環器系が多く、直接死につながるものばかりです。

もし、Aさんの胸部静脈瘤が破裂寸前であれば、腎臓が壊れても手術をしなければなりません。
患者さんが

「透析は絶対いやだ」

といっても、医師は患者の命を救うために、造影剤を注入せざるを得ません。
言い換えれば、クレアチニンが1.30を超えた腎臓病患者は、常に透析を覚悟していなければならないということになります。

腎臓病患者さんは、病気の初期段階から、血流改善に努め、自分で腎臓病の治療をしていくことが大切といえましょう。