透析直前の相談者の血液検査表を見ると、クレアチニンの数値も、BUNやカリウム、総タンパクなど検査表の数値も、症状もまちまちで、透析に入る条件が一貫性を欠いているように見えます。
医師たちは、どんな状態になると
「透析に入りましょう」
というのか、透析導入のタイミングについて調べてみました。
この記事の目次
透析導入はクレアチニンの数値だけでは決まらない
1991年に厚生省(現厚生労働省)は、慢性腎不全患者のための透析導入基準を発表しています。
だいぶ古い資料ですが、そこに提示された基準は、現在でも有効性が認められており、医師たちはこの導入基準に基づいて治療を行っているそうです。
透析導入のための3つの観点
臨床症状(腎機能の低下によって起こる症状の出現数)
- 水の貯留(むくみ・胸に水が溜まる)
- 酸塩基電解質異常(高カリウム血症、酸の貯留)
- 消化管の症状(吐き気・嘔吐・食欲不振)
- 心臓の症状(呼吸困難・息切れ・心不全・著明な高血圧)
- 神経の症状(意識混濁・けいれん・しびれ)
- 血液の異常(貧血・出血が止まりにくい)
- 目の症状(目がかすむ)
腎機能(血清クレアチニンの数値)
クレアチニンクリアランスが
- 8mg/dl以上
- 5~8
- 3~5
の3段階に分けて検証する。
日常生活障害度
- 起床できないなど尿毒症の程度
- 日常生活が著しく制限されているか
- 運動や仕事が出来ないなど日常生活にどの程度支障をきたしているか
上記3つの観点を点数化し、60点を超えたところで透析に導入するかどうかを総合的に判断します。
例えば、クレアチニンの数値を判断する場合、小児、高齢者、女性、糖尿病患者は、筋力量が少なくクレアチニンの産生が少ないことから、クレアチニンの数値が低くても導入時期を早めます。
また、病院によっては、透析導入が早いほど、体が元気なため、透析に入ってからの生活が楽であることから、透析導入の時期を早めることもあるのです。
なお、この3つの観点に関しては、厚生省科学研究 透析導入適応の基準(厚生省科学研究 1992年)を一部省略して引用させてもらいました。
透析導入基準まとめ
透析導入基準を通して医師の、腎臓病治療の観点を説明してみました。
例えこの導入基準を理解したとしても、内臓トレーニングの実践者の多くは、主治医の行う治療について納得していません。
「突然、透析に入ると言われた」
という驚きのメールでも明らかです。
納得できない理由は、どんな状態になったら透析に入るか、上述した導入基準を事前に知らされていないからでしょう。